わくわく木版画

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木版はがき:どくだみ


木版はがき「どくだみ」
150円

 五月も半ばを過ぎたので、早いところでは、もう「どくだみ」が白い十文字の花を咲かせている。やや隠花性の植物だが、場所によっては、陽盛りの中にも育つ。葉の付け根のところで茎の向きが独特に方向を変えるので、姿に特徴的なジグザグのラインを生じる。十文字の白いガク(花びらに見えるが・・・)の中央に屹立する小さな黄色花の群れが作り出す塔がアクセントとなり、清楚な印象と勢いよく伸びようとするパワーとを同時に感じさせている。

 十薬と称されるように、さまざまな薬効が昔から認められていて、庶民薬には欠かせない材料だった。何処にでも良く育って手に入りやすかったから、手軽な保健薬でもあったのだろう。

 さて、この木版画を良く見て欲しい。花びら(ガク)の輪郭線を表すのに葉の色と同じ茶を使用している。もちろん白い色は和紙の地色を利用しているだけで、絵の具は使っていない。

 黄色と緑色。その2色が重なった黄緑。茶と黄色。その2色が重なった色。そして緑と茶の重なった部分も色が変化する。使用した色は3色。つまり3版の版木を摺り重ねるのである。

 前回の「てっせん」の稿で説明したように、簡潔な手間で表現するよう考えた挙句に採用した3色である。

 もし、あなたが作者だったら、どのような色分解を考え出しただろうか? 分解の仕方は、このような単純な木版画の場合でも、本当に人それぞれなんですよ。