わくわく木版画

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ぼかしの技術:こすり込むようにぼかす

ぼかしは、木版画の表現の中でとても大切な技術です。



筆で絵を描く時のように、感覚の赴くままに、好きなように好きな色を重ねていく、
そういった芸当は、木版画ではできません。

一つの版は、一つの色になるからです(基本的には)。



そこでぼかしの技法が生きてきます。



ぼかしを加えることで、色面に変化がつき、
微妙な変化が感情を表現してくれるからです。





ぼかしにも色々なぼかし方の技術があります。



この作品で、ぼかしている青い色は、
わずかの色を擦り込むようにして版面につけて、微かなぼかしを作っています。



写真はガラス面がついたままの撮影なので、青い色は広がって見えていますが、
本当は、人物の周りを取り囲む青い色のオーラのように、
わずかな青みがぼかされているのです。



このぼかし方は、根気と版面の状態をしっかり理解して実施します。



版をまずしっかり絞った布でわずかに湿らせます。
そこへ、ほとんど水気を拭き取った刷毛先にわずかの青い絵の具をつけて、
こすり込むように刷り込んでいきます。
当然、外側へぼかされていくようにすり込みます。


わずかの水分で作業しているので、すぐに乾燥してしまいますね。
乾燥してしまうと、紙に絵の具はつきません。
だから、湿り気がなくならないうちに、摺りあげていくのです。


一度に広い面積はできないので、何度かに分けて、全体をぼかしていきます。
ということは、1回目と2回目の間が濃くなったり、とムラができやすいのです。
その点にも気を配って作業していくので、根気が必要になりますね。


ほのかに加わったぼかしは、ベタの色面にない深い感情を表現してくれるので、
これは得難い技術なのです。