わくわく木版画

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木版はがき:笹飾り


木版はがき「笹飾り」
150円

 年に一度の出来事。
 いろいろあると思う。
 思いつくのは人それぞれ、誕生日でもいいし、結婚記念日でもいい。ま、たいていの記念日がこれに入るから、365以上の出来事を思つくことが出来るわけである。なにしろ日本では、「何かの日」になっていない日はないらしいから・・・。

 それでも、年に一度の出来事と普通に考えたときに、一番連想しやすいのが、七夕の話であろう。「まるで七夕みたい」とたとえに使うほどだから、代表と考えていいように思う。もっとも、最近の若者層がそんな画一的な連想を抱くとも思えないが・・・。自ずと書き手の年齢が想定されてしまうかな?

 まあ正直なところ、7月7日の七夕の日には、早朝からサトイモの葉に溜まった露水を集め、墨を摺り、短冊に願い事を揮毫する。そういう一連の作業を、毎年まめまめしく行う暮らし振りであった。田舎の利点は、自然の中からのそうした材料が手軽に入手できること。短冊を飾る笹竹も、裏の山に入って、手ごろな大きさのものを朝のうちに準備しておくのである。しかし、七夕の行事の一番の記憶は、そんなところにはなかった。一連の行事を終えて庭の涼み台にごろ寝すると、川幅の広い銀河が暗い空の中央を悠々と流れ、その高い空を、星々をじっと凝視しているうちに、天の高さが遥かに遠のいたり、急速に近づいたりして、自分が宙に浮いたような気分になっていくのであった。時間の消滅した、無限と連なっているようなその感覚。それが一番の記憶である。

 外国の文化を否定するのではないが、南瓜に灯を点したり、生きている植物を遠慮会釈なく電線で簀巻きにするような事に町中が狂騒するようなことよりは、自分の国の文化的行事を、もう少し再考したほうがいいのではないか、と考えたりもする。特別に保守的になったわけでもないが、カブレ感覚は好きではない。

 さて、この作品の色分解は、もっとも基本的な分解で勉強になると思う。機械のオフセット印刷の分解法に似ている。もっとも機械のような網点の集合にはなっていないが・・・。機械は赤・青・黄色の3原色と黒の4色の網点の粗密で全ての色を表現する。この笹飾りも赤・青・黄色の3原色と黒ならぬ単独の深緑色の4色で出来ている。赤+青=紫、赤+黄色=オレンジ、青+黄色=黄緑。元の3原色に重ね色の3色が加わり6色。それに深緑の笹竹で合計7色。4版7色と言います。

 版画の場合、3色使用すると最大8色まで色を出すことが出来る。なになに?どうしたって7色だ、と言うの? 作者というのは貪欲なものです。どれかの色で枠を作ると、ホラ!中に白い面が出来るでしょう。つまり、紙の地色を白として利用するわけなんです。つまり、元の3色+それぞれの重ね色3色+3色全部の重ね色1色+紙の白=8色となります。