わくわく木版画

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木版はがき:ニッコウキスゲ


木版はがき「ニッコウキスゲ
200円

 日光の霧降高原は、ニッコウキスゲの花が山の中腹から山頂まで続く。リフトで移動すると、山腹から頂上までの間で、花の開き具合が違っている。タイミングの良い時期に訪れると、満開の花の中から、山頂近くの蕾状態の咲き具合まで、段階ごとに鑑賞することが出来る。

 一方、こちらは信州・霧が峰。なだらかな高原の霧が峰では、平坦な草原をニッコウキスゲが埋め尽くす。見渡す限りといった状態のキスゲの群落は、霧降高原の縦方向の群落とはまた趣を異にして見ごたえがある。

 キスゲは甘草とスタイルは似ているけれども、前者のほうが都会的。ほっそりとシャープでモデル風。片や甘草は、幅広のやや波打った葉、花も波打つと同時に、荒っぽく開きすぎの様子。残念ながら、山出しの感をいなめない。そのくせ生息地を吟味すると、キスゲのほうが山の中に育っている。里の甘草より、いくらか深窓の令嬢の如し、か。

 甘草の朱を帯びた花色より、キスゲの花は黄味が強い。花時を過ぎていても、あまり赤味を感じさせない。それがまたいくらかキスゲを上品に感じさせている。面白いことに、甘草の花は赤味が強い分葉が薄く、葉の色が黄緑に近い。キスゲは葉の緑が濃い目であるのに、花色が黄味が勝っていて濃淡のバランスをとっている。それぞれを単独で鑑賞すると、そうしたニュアンスの違いによって、バランスがちゃんと成り立つように出来ていることがわかる。う〜んさすが、自然は偉い! 神様は本当に偉いな〜!!

 版画的に見ると、これは基本形であまり説明するところがない。全てをアウトラインでかたどって。その枠の中に色をはめ込んでいる。浮世絵の時代のメインの手法であった「主版法」(輪郭線をまず彫り上げ、その版を別の板に転写して各色版を作る)そのままの手順である。葉の部分に、黄色の重ね色で濃淡が表現されていることに留意してもらうくらいかな。