わくわく木版画

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木版はがき:向日葵


木版はがき「向日葵」     ホーム頁 http://kobo-yuu.kir.jp
200円             

 ムワッと湿気が肌に貼りつくような空気の中、夕べ、隅田川の花火大会が終了した。雷雨の気配がずっとしていたのに、とうとう降らずに済んだから、主催者はホッと胸をなでおろしていたことだろう。3年に一度ぐらい、19時の開始直前にザーッと夕立になることがあるが、不思議と雨で中止にはならない。異常気象と言い続けているわりには、意外にも暦は正確に時を刻んでいる。
 
 正確に時を刻むのはこちらも同じ。向日葵は太陽へ向かって刻々と花の向きを変えていく。常に太陽に正対して花を開くことから名前も由来しているようだが、花の形そのものも、まさに人々が描く太陽のイメージのままだ。このイメージに対してだけは、そうかしら私にはさっぱりそうは見えないけど? といった天の邪鬼は存在しそうにない。

 向日葵は良く知られた花なので、説明は省く。代わりに、「色の不思議」について書くことにしよう。例によってこのはがきの「色分解」をする。まずすぐに分かる黄色。次に緑。花の中心は茶色だな。どうです?
 あ、いけない、いけない。線が入ってますね。黒い線。輪郭線とよく観ると葉脈も黒い線で表現してあるんだ! なるほど!

 おっ! あなた、さすがにこのブログをずっと読んでくださるだけあって、すっかり「色分解」が得意になっていますね! 嬉しいことです。成長する読者がいて、退化する筆者がいる・・・というようなことにならないように、私も気を引き締めていかなきゃ、と武者震い中なんですよ。

 黄色はオレンジ味のある濃い目の黄。緑はオリーブがかったアースカラー。茶は黒味を帯びたアンバーに紫を加えてあります。線の黒は真っ黒ではありません。かなり明るめのグレーに紫を多めに加えております。真っ黒だとコントラストが強すぎて、黄色と喧嘩してしまいます。それゆえかなり明るいグレーです。紫が入るのは「補色」効果を強調するためです。茶に紫が入っているのもそのためです。黄色と紫は「12色環図」で真反対の色です。これを補色と言いますね。色の対立が強調されて一層鮮やかに見える視覚効果をもたらします。メインカラーの黄色を強調すべく、さりげなく補色を忍ばせてあります。目で見て分かる、というようなものではないのですが、われわれの視覚はその効果を無意識レベルでしっかり認識するのです。
 明るいグレーの線は、ほかの色の彩度が落ちるのを若干カバーしています。黒は本当に強い色で、黄や緑が派手すぎるぐらいに強烈に見えていても、黒っぽい輪郭が入ると一気に鮮やかさが減退します。そんな訳で、黒の力を弱めるためにグレーにしています。現代感覚では輪郭のない鮮やかな色感の方が好まれますね。それにしても色のバランスは実に微妙。不思議一杯です。