わくわく木版画

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木版はがき:てるてる坊主


木版はがき「てるてる坊主」
150円

 東京もいよいよ入梅か。
 今朝の新聞では、梅雨はインド方面での大気の動きがはるか日本にまで影響して起こるものらしい。国境とは無縁に変化する大気の動きが、われわれの季節を支配している。

 梅雨だから、と分かっていても、人事には雨の欲しくない日がある。なんとか晴れて欲しい! どうか神様、明日だけは雨を遠慮してください! 子供のころはそうやって真剣に願い事ができたものだが、さすがに大人になるとどこか心の奥が冷めていて、この天気図じゃ晴れろって言うのが無理だよな、と願い事の片隅で分析などしている。その反面、晴れなきゃ大変なんだよ、これまでの努力が台無しなんだよ・・・とやきもきして、やはり神頼みしている。

 素直に「てるてる坊主、明日天気にしておくれ〜」と軒先を見上げているほうが精神的に無理がなさそうだ。どっちにしても結果に変わりはないからだ。つまり、なるようにしかならない。だから、へのへのもへじ〜〜〜と遊び心で愉快な顔を書いて面白がって、ただ待つ。


 さて、この版画はなんとも解説しようがないなー。赤い線、黒い線。水色の面。丁寧に彫って、摺り重ねるだけだ。重ねの色もないから、色味はあなたの好きなイメージに沿って自由にどうぞ、と言う感じ。
 でもそれではちょっとそっけないので、摺りと彫りのことでエピソードをあげてみます。

 摺りの実演をしていると、しばしば熱心なお客様から「わぁ〜きれいだけど、でもこれって、彫るのが大変なのよね〜」と声をかけられます。ちょっと返事に窮します。彫るのも確かに大変なんですよ。でも、こつこつ彫っていくといつか彫りあがります(ここでは上手・下手は別問題と考えて下さい)。摺りは版毎に摺りかたが違うのです。版の彫りあとの状態を判断して、摺り方を微妙に変えなければなりません。それに絵の具の濃度や水加減、刷毛の含みなど考慮して、バレンの圧力や回し具合を調整します。それが摺りの技術になっていきます。
 そんなわけで、一度でも制作経験をお持ちのお客様は「でも、摺りってなかなか思うようにきれいに摺れないのよね〜」と首肯されます。