わくわく木版画

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木版はがき:ガクアジサイ


木版はがき「ガクアジサイ
150円

 同じ種類の花を続けて紹介するのはいかがなものかとは思うが、版画の制作法の対比で見ていただくと参考になると思うので、あえて取り上げよう。

 5月24日紹介したのは大きな塊になって咲く紫陽花だったが、今日紹介するのはガクアジサイ。私自身も、塊の紫陽花にはぼってりとして重ったるい印象が付きまとうので、どちらかというとガクアジサイの方が好みである。同意見、同じ好みの方は結構多い。

 「ガクアジサイ」という名前だが、私も小さいころは「額紫陽花」だと思っていた時期がある。大きな花びらが小さな蕾をグルリと取り囲んでいるように見えるから、その大きな花を額縁に見立てたのだと思っていた。音で耳にすると、そんな連想が浮かぶんです。その大きな花びらに見えるもの、それが実は花の顎なのである。それでガクアジサイと呼ぶんである。と知ったときも、額でもいいじゃないか、という気がしたものであった。

 大きな花びらのようなものが顎。本当の花は中央に小さく球になっている。5月21日の「どくだみ」も似たような形態でした。

 さて、前回の紫陽花と今回のガクアジサイの画像をスクロールしながらよく見比べてみましょう。第一に黒いアウトラインが有・無です。ガクアジサイの茎と葉の重なり部分を見てください。アウトライン(輪郭線)がないと形の区別がつかなくなるので、茎と葉の境目が白く抜いてあります。そうすることで輪郭を表現しているのです。

 色を見ると、ガクアジサイにも緑の版木はありません。さて、この画は何版で出来ているのでしょう。黄色・青・茶。そう、あなた正解です。
 では緑はどうやって・・・。
 そうですね! 黄色と青の重ね色。紫陽花のときと同じです。やはり青い花の色と、緑の葉をちょうど良く色を出すために、黄色と青の色味や濃度の調整がポイントになります。元気のいい緑になっても、青ざめた花の色になってしまっては、「絵」が駄目になってしまいますからね。葉の緑色が出やすくするために、黄色は緑味を帯びた黄色にしてあります。これが赤味を帯びた黄色を使用すると、青と重なったときに茶っぽい色味が出て、さわやかな緑にならないんです。

 そんなところをあれこれ工夫する。木版画って楽しいね。